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産業医から見た、在宅勤務におけるストレス要因とその対処法

静岡ではたらく産業医のブログ

新型コロナウィルス感染拡大に伴い、一気に在宅勤務が浸透しました。

これからの労働衛生においても、在宅勤務という新しい勤務形態に対して、正しくアプローチしていく事が求められるでしょう。

  • 在宅勤務における、ストレスの原因は一体何なのか?
  • その対処法は?

見ていきましょう。

 

在宅勤務におけるストレス要因

2021年に発表された、アンケートに基づく988人のデータを分析した論文によると、身体的および精神的健康状態の低下の重要な予測因子には

  • 身体活動の減少
  • ジャンクフードの摂取量の増加
  • 同僚とのコミュニケーションの欠如
  • 家に幼児がいること

が、挙げられるとされていました。

逆に、気晴らしがある事で精神的な状態は良好に保たれやすくなりました。

また、在宅勤務環境がハード面で整っていると、身体的にも精神的にも不調を訴える確率が減りました。

実際に不調を訴える確率は

  • 身体的な不調…在宅勤務者の66%
  • 精神的な不調…在宅勤務者の75%

とされ、男性よりも女性、高所得者よりも低所得者がより不調を訴えていました。

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在宅勤務におけるストレス軽減方法

以上の結果を踏まえると、在宅勤務におけるストレス軽減の方法がわかってきます。

まず1つめ。運動。

身体的な活動性の低下が原因でストレスを抱える人が多く、室内でもできる運動や、外でのランニングなど、感染リスクを考慮した運動環境の構築が、在宅勤務者には必要であると言えるでしょう。

2つめ、食事。

どうしてもジャンクフードなど、手軽に食べられてしまう食事が増えるようですが、これに関しては正直、海外の論文データですので、日本に関しては当てはまらないかもしれません。ただし、食事内容が偏る事によるストレスは考えられますから、ある程度バランスの取れた食事を在宅勤務中でも摂取できる環境が、在宅勤務のストレス軽減には必要であると考えられます。

3つめ、同僚とのコミュニケーション。

これを在宅勤務環境で構築するのは困難ですが、ビジネスチャットツールなど、より円滑に気軽にコミュニケーションができるツールの導入などによって、改善できる可能性があります。

従業員同士のコミュニケーションは、労働衛生以外でも、シンプルにビジネスとして重要ですから、未導入の企業様は導入を検討されても良いかもしれません。

4つめ、幼児のいない環境で仕事をする。

幼児を家から出す、例えば保育園などに預ける、というのが困難になってしまうのも、今の時代は考えられます。やはりそうなると、完全な在宅勤務というよりは、コワーキングスペースのような「幼児のいない環境」に移動して仕事をするというのが、ストレス軽減には大きく効果がありそうです。

5つめ、気晴らしを設ける。

時間を決めて気晴らしを設けるなど、システムとして気晴らしを組み込む事で、精神的な在宅勤務ストレスを軽減させる事ができそうです。

また、所得と在宅勤務のストレスの関係性は、おそらくこういったストレス軽減のための施策を実施するための財力があるかないか、という点にあるかと思われます。

ここに関してはもはや産業衛生の範囲内ではありませんが、仮に所得が低くても、会社の福利厚生として上記のような施策を社員に提供する事ができれば、所得に関係なく在宅勤務を快適にする事ができるかもしれません。

そして女性の方が男性よりも不調を訴えやすかったというのは、シンプルに女性がアンケートでより不調を訴えやすい(ストレートに言語化しやすい、男性はやせ我慢している)か、本当に何かしらの理由で女性の抱えるストレスが男性よりも高い可能性があります。

あるとすれば、やはり家庭に幼児がいる場合などの対応が、どうしても女性メインになりがちという社会的背景があるかもしれません。この点については、日本も同様でしょうから、幼児がいる家庭の女性社員の在宅勤務におけるストレス管理は、産業医は目を光らせておく方が良いと言えるかもしれません。

 

在宅勤務を導入する企業に対し、産業医はストレス対策の知見を提供すべき

これからの時代、在宅勤務が全くのゼロになるという事は、無いと思います。

業種にもよるでしょうが、かなり浸透したまま残る企業も出てくるでしょう。

そうなると、これからの産業医や労働衛生委員会に求められる役割として、在宅勤務者への労働衛生マネジメントは、重要性を増してくる事が予想されます。

ストレス軽減のノウハウを提供するだけでなく、具体的な方法として、上記のような施策を落とし込むための手法やコストも、ある程度提供した上で現場に落とし込んでもらう必要が、出てくるでしょう。

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