産業医の大石です。
静岡は車社会です。僕は生まれも育ちも静岡で、大学だけ県外にいましたが…静岡に舞い戻ってからも、やはり「車社会」である事には、あまり変わりありませんでした。
とはいえ、浜松と静岡、どちらが「車社会の程度」が強いかと言われれば、それは浜松でしょう。静岡はまだ、中心部の密度が高く、都市としての機能を有していると思います。
今回は、そんな「車社会」である静岡を、産業医の視点から見ていきます。
産業医から見た「車通勤」と電車通勤の違い
車社会の静岡では、当然ながら「通勤」も車で行う人が多いのが特徴です。むしろ「通勤のために車を買う」という人が多いのではないでしょうか。
これは産業医から見ると、電車通勤の社会とはまた違った特性を持っています。
一言で言ってしまうと
- 車の運転中に運転者に問題が発生しないかどうか
が、重要になってきてしまうわけです。
静岡という「車社会」で、通勤をより安全にするために
例えば、車の運転中にいきなり「てんかん」の発作が起きて、意識を失ってしまえば、本人はもちろんの事、周囲の車や歩行者を轢いてしまう可能性があります。
電車通勤の場合、仮にてんかん発作が電車内で起きたとしても、不特定多数に危害が加わるケースはほぼありませんから、特別気にする内容ではありません。伴って、東京の産業医の先生はおそらく、上記のような事は考えないと思います。
具体的なケースを考えましょう。
まず、元々持病として「てんかん」をお持ちの方。
これは、多くの場合は薬でコントロールされておりますし、定期的に専門医の診察を受けていれば、それほど大きな問題にはならないと思います。
ただ、業務に波があって、ものすごく忙しい時期が来た場合、通院が疎かになるケースもあるでしょう。そうすると
- 気がついたら薬が切れてしまった
なんて事にも、なりかねません。
そのような労働環境(通院がおそろかになるくらい、多忙になってしまう労働環境)は、未然に防いであげる必要があると思われます。
産業医が静岡の「車通勤」をより安全に
次に、今まで「てんかん」を起こした事は無いが、脳腫瘍が原因で初発のてんかんを発症した方。
例えば脳腫瘍の手術を行って、術後はてんかん・けいれん等が起こりやすいですから、場合によっては主治医から薬物でコントロールする指示が出ているかもしれません。
そういった場合、やはり退院していきなり車通勤というよりは、少し時間を置いて症状が出ない事を確認して、車通勤を再開させるなどの配慮が必要になるかなと、産業医の視点からは思います。
当然、脳外科の先生もプロなので、その辺りの事は熟知しておられると思いますが、どうしても他県から来られた先生の場合、静岡という「車社会」が頭から抜け落ちているケースが、ゼロではないと思います。
日常的に問題のない範囲でも、毎日車に乗るようなケースでは、よりシビアに発作のコントロールが必要になると考えられます。ほとんどの先生は、おそらくプロとしてそこまで考えた上で、必要な治療を行ってくれていると思います。
しかしながら、やはり患者さんの「通勤や労働」にまで、100%の精度で配慮する事など、忙しい臨床の現場で脳外科として働いている先生にとっては困難だと思います。
そこで取りこぼされてしまった数少ない症例に対して、産業医が未然に防ぐアプローチを事業所側からしかけるのも、必要なのではないでしょうか?